【戦争】戦争犯罪・裁判

「BC級裁判」を読む

半藤一利 秦郁彦 保阪正康 井上亮『「BC級裁判」を読む』日本経済新聞社半藤、秦、保阪という代表的な現代史の書き手に、富田メモをスクープした日経新聞の井上編集員を加えた4人で、BC級戦犯裁判を語るという本書。取り上げられている事案は次の通り。泰緬…

収容所長たち

菅辰次中佐(19期)、広島出身。少佐のときに予備役となり、アメリカに滞在。二度目の召集でボルネオの俘虜収容所長となる。俘虜のなかに『風下の国』の著者アグネス・キース女史とその夫、子供がいた。ボルネオ赴任前にこの本を熟読していた菅は驚き、女史…

サントス殺害事件

引き続きサントス殺害事件について。田々宮英太郎氏の『参謀辻政信・伝奇』にも、この事件は出てくる。田々宮氏は一応、和知の証言と並行して、林の主張も前掲の著作から引用して載せている。しかし最終的には、第三者の意見として、門松正一大佐の著作『絞…

日本武士道の成れの果て

林義秀『日本武士道の成れの果て』これはエライ本である。何がどうエライかと言われると、うまく説明できないが、とにかくエライ本である。林は陸軍中将(26期)であり、フィリピン攻略時の第14軍参謀副長兼軍政部長であった。終戦時はビルマで師団長をして…

人は石垣

南方攻略の三軍(25A、14A、16A)を見ていると、人間関係の悪さと戦争犯罪や不祥事は比例関係にあるということが分る。オランダは今村と岡崎に死刑を求刑したが、結局二人とも無罪となった。第2師団長だった丸山政男も無罪、東海林俊成も死刑を求刑されてい…

将軍はなぜ殺されたか 其の三

判決を受けて、中山弁護士は素早く、再審を請求する書類を提出した。その書類は以前と違い、簡潔で洗練されたものであった。中山弁護士への通信を検閲していたオーストラリア軍は、彼に知恵をつけているのが誰なのか知っていた。その人物こそ、ベン・ブルー…

将軍はなぜ殺されたか 其の二

イアン・ウォード『将軍はなぜ殺されたか 豪州戦犯裁判・西村琢磨中将の悲劇』原書房初期の戦犯裁判ではよく使われていた「指揮官責任」という幅広い訴因は、この頃(1949年)には国際社会で受け入れられないものになっていた。ハックニーによる特定に失敗し…

将軍はなぜ殺されたか

イアン・ウォード『将軍はなぜ殺されたか 豪州戦犯裁判・西村琢磨中将の悲劇』 原題は『Snaring the other Tiger』大分前に読んだ本だが、良い機会なのであらすじを紹介しておく。 オーストラリアは第25軍司令官であったマレーの虎山下奉文の首を欲した。し…

参謀処刑

三日目は日曜日で休廷であった。山形少佐はほかの収監者とともに、朝食をすませた直後、やってきた護衛兵に連行される。少佐としては、その後の裁判の打ち合わせでもあろうかと思っていたらしい、元気に出かけていった。夕刻になって、収監者たちが並んで便…

続・巣鴨プリズン

尾家陸軍大佐は陸士28期。独立歩兵第174大隊長(第102師団隷下)としてネグロス島の守備に当たっており、現時住民虐殺の責任を問われて銃殺刑の判決を受け巣鴨に移送されてきた。55歳の老大佐であった。花山師は、A級の7人全員に、尾家大佐の遺書を読み聞…

巣鴨プリズン

小林弘忠『巣鴨プリズン 教誨師花山信勝と死刑戦犯の記録』中公新書 巣鴨の初代教誨師花山信勝が主人公。これは色々な事情が重なってのことだが、花山師という人は、決して人気のある(評判の良い)人ではない。”巣鴨の父”という呼び名は師ではなく、二代目…

九州二題

『終戦秘録 九州8月15日』上野文雄 白川書院 『逃亡 「油山事件」戦犯告白録』小林弘忠 毎日新聞社これも古本まつりで買った。『九州8月15日』は、菊水作戦から終戦後の復員あたりまでの九州を舞台にしたドキュメンタリー。著者は西日本新聞の記者。 九州で…

NHKスペシャル「パール判事は何を問いかけたか」

何とか間に合いました。 ホテルにこもりっきりだったパール判事と、日本を見て周ったレーリンク判事。二人の友情、良いですね。今まであまり注目されてこなかったイギリスのパトリック判事。 あんまり期待してなかったんですが、なかなか良かった。でも高い…

letter from Manila 本間雅晴からピゴットへ

親愛なるピゴットヘ 何よりもまず、わたくしの人物につき詳細な口供書をいただいたことを心から感謝いたします。それはわたくしの友人からいただいた中で最もすぐれたものでした。この口供書が軍事委員会に大きな影響か及ぼしたことは疑いありません。そして…

朝日新聞・偽証反省「命令は自発的だった」

12月17日の朝日新聞朝刊、社会面に面白い記事が出ていた。以下はasahi.comからの転載。映画「ラストエンペラー」で知られる中国清朝の最後の皇帝、愛新覚羅溥儀(あいしんかくらふぎ)の自伝「我的前半生(わが半生)」が、大幅に加筆した完全版として来…

ラストサムライを見ながら

ラスト侍は映画館で見た。多分4回は見たと思う。一つの映画を見た回数としては私の中では最多タイだろう。DVDも持ってるが、これは一回も見てない。何というか映画も音楽も結局めぐりあい宇宙ですね。そのときの環境、心境次第で、同じものでも全く受け取り…

ある神話の背景

「軍命令は創作」初証言 渡嘉敷島集団自決 元琉球政府の照屋昇雄さん 以下引用 ≪「真実はっきりさせようと思った≫ 照屋昇雄さんへの一問一答は次の通り。 −−なぜ今になって当時のことを話すことにしたのか 「今まで隠し通してきたが、もう私は年。いつ死ぬか…

橘丸事件

61年前の8月3日、病院船橘丸は、バンダ海上で、米駆逐艦からの停戦命令を受けた。橘丸には、第五師団の第十一聯隊第一、第二大隊と第四十二聯隊の一個中隊が乗っていた。臨検によって隠していた武器を発見した米艦は、直ちに橘丸を拿捕、乗っていた将兵…