【感想】軍人の評伝

がんこなハンマーシュタイン

がんこなハマーシュタインposted with amazlet at 12.09.15ハンス・マグヌス・エンツェンスベルガー 晶文社 売り上げランキング: 487683Amazon.co.jp で詳細を見る「用心もせず、恐れもせず、あんなにはっきりあの政権を拒否した人を、私はほとんど知らない」

月桂冠はわしが名付けた

正堂会編『落合豊三郎と孫子の兵法 正々堂々と生きた男の記録』正堂会とは落合の孫で構成された団体である。本書が出た時の代表は嫡孫の落合秀正氏であり、執筆者は岡崎清氏である。落合秀正氏といえば陸士56期で、高木俊朗の『ルソン戦記』の実質的主人公で…

銀河の道

中島欣也『銀河の道 ”社会主義中尉”松下芳男の生涯』恒文社芳男の父は下士官上がりの将校であった。新発田の彼の家の側には、第15歩兵旅団副官だった大杉東大尉の家もあった。日露戦争で鬼少佐と謳われる人物であった。大杉が宮城に詰めていた時、何かの際に…

「ワレ皇居(キュウジョウ)ヲ占拠セリ」

随分前に読んだ本だが、時節柄。 著者は仲乗匠。サブタイは二・二六事件秘話「宮城 坂下門内の変」 その時であった。いつの間にか長身の将校外套の男が一団をすりぬけて中橋の前に出た。その襟章は「1」、赤坂第一聯隊の将校である。 「お帰り―」男は一言、…

銀時計の特攻

銀時計の特攻―陸軍大尉若杉是俊の幼年学校魂 (文春新書 644)以前このブログで触れたことのある若杉是俊少尉に関する本が出ていた。まったく驚いたが、勿論すぐ購入して読み終えた。村上兵衛さんの本に出てくる話も多いが、遺書は初出だろう。私にとっては期…

まとめて書評

先月読んだ本の書評。済ませごとみたいであれだけど。『レイテの名将 片岡董』細田 昌 レイテの第一師団長片岡董中将の評伝。彼の実家は城崎の旅館、三木屋。 志賀直哉は片岡の実家に逗留して『城崎にて』を書いたそうだ。 戦後、レイテで彼の師団と相対した…

谷川メッケル

『追想 陸軍少将 谷川一男』 昭和29年に55歳の若さで逝去された谷川一男少将の追悼録。発行者は御子息。追悼文を寄せている旧陸軍軍人の面子がなかなか豪華。少将は元来文学や哲学を愛好する人であったが、家計の関係から官費の陸士に進んだというのは、…

昭和の名将と愚将

半藤一利、保阪正康両氏の対談をまとめた『昭和の名将と愚将』という本が出ていた。取り上げられているのはいつもの面子なので、立ち読みで済ませた。しかし文句ばっかり言っていてもあれなので、自分でも私的(わたくしてき)昭和の名将をリスティングして…

ヒデオ・ロックサイド

先のエントリで突然、昭和13年1月15日の大本営政府連絡会議の模様を取り上げましたが、別に深い意味があったわけではありません。ただ外交というのは難しいなあというだけです。十分現在でも参考になる話ではあると思いますが。で、三つ前のエントリで…

昭和維新の朝

工藤美代子『昭和維新の朝 二・二六事件と軍師斎藤瀏』日本経済新聞社 二週前くらいに購入し、一週前には読み終わっていたのですが、感想が遅くなりました。斎藤瀏とその娘の斎藤史の著述を中心に構成されていますが、所々挿入される著者の歴史観がやや気に…

八甲田山から還ってきた男

高木勉著、サブタイトルは雪中行軍隊長・福島大尉の生涯。 先日の百万遍の古本まつりで購入した一冊なのだが、思った以上に面白かったので、軽く紹介しておく。 八甲田山雪中行軍といえば有名なのは『八甲田山死の彷徨』である。これは高倉健、北大路欣也で…

石原莞爾 生涯とその時代 [上]

正直文章的にはも一つで、所々「ん?」と感じます。基本的には石原に関するエピソードの羅列で、失礼を承知で言えば、私がホームページでやってる人国記の超々グレードアップ版という感じです。しかしその参考文献の量が半端じゃないです。従ってどんな人で…

親泊朝省と菅波三郎

引き続き、澤地久枝『自決 こころの法廷』NHK出版 及び、須山幸雄『二・二六事件 青春群像』芙蓉書房前のエントリは平日の晩にチャッチャと書いたので、やはり足らずが多く気になる。親泊の37期は熊幼に重要人物が集中している。菅波、大蔵栄一、香田清貞…

自決 こころの法廷

澤地久枝著『自決 こころの法廷』NHK出版本書の主人公は、沖縄出身の軍人の中で最も知名度のあると思われる人物。陸軍大佐親泊朝省(おやどまり ちょうせい)。熊本幼年学校から陸士(37期)に進み、騎兵科の恩賜で卒した。この頃の陸士はまだ兵科別で恩賜…

戦場の人間学

著者の篠原氏には小川又次や田村怡与造の本がある。 副題は「旅団長に見る失敗と成功の研究」 さらに帯には 「できる男」「できない男」日露戦争戦略と戦術、勝利と敗北の構図。実戦で力を発揮するには何が必要なのか。またどうしたら成果をあげられるのか。…

土佐のいごっそう〜 土居明夫

終戦を迎えると土居は、敵将湯恩伯の友情と協力の下、戦後処理に腕を振るった。第十三軍嘱託であった村辺繁一氏は土居に関して強烈な思い出がある。終戦後間もなく、ある日本人女性が米軍に拉致され、数週間後米ドルを貰って帰ってきたという事件が起こった…