「要は、勇気がないんでしょ?」で権威が失墜する作戦部長

ちょっと昔の話。今よりも僕はずっとずっと軍隊が好きで、国防方針を説明するのが好きだったんです。

でまぁ、当時も今と変わらず抗日が酷くて、

男友達と飲みながら「抗日が酷い、だから対ソ戦できないんだ」と文句言ってたのです。

市ヶ谷で。

したらまた、この友達が「じゃあ、わかった」と言うのです。「今から北平に行こう」と。

独断専行は昔はやりましたけどオレは焦りました。「いや、ちょっと待って」とあわてます。

でも友達は、少し遠くで飲んでいる宋哲元と秦徳純を指さし、「あそこ行ってドンパチやろうぜ」と言い、支那駐屯軍に打電しようとします。

オレは「いや、向こうも迷惑だし」とか「さすがにうざいっしょ」とか言って止めます。

友達は「嫌がられたらすぐ圧迫面接で和平交渉すればいいんだよ」と言ってましたが、オレが動こうとしないので行くのをあきらめました。

「じゃあ、北平じゃなくて、蒋介石の本拠南京襲うか?」と友達は言います。

「逆にそっちの方が難易度高いだろ」とオレは顔をしかめます。

「でも抗日が酷いんだろ? だったら国民党倒すしかないだろ」

「そうだけど、もっと普通に交渉したいっていうか」とオレ。

「なに、普通って?」

「外交とか、貿易とか、そういう…」とハッキリ言えない自分。

「じゃあ、オレが今から傀儡政権つくって、それでお前に親日政治家を紹介したらいいか? それも外交だよな」

「それは…、だけど、ほら、お前もこの前言ってたじゃん。傀儡政権に来る政治家って軽い子が多いとか」

「は?」

「その…」

「…軽い子じゃねぇよ。ノリが良い子だよ」

「あ、そうだったね。…でもオレ、ノリの良い子、少し苦手だし。そこまでして抗日をどうにかしたいってわけでもないし…」

友達はオレの顔をじっと見つめながら、一言、

「だせぇ」

と言いました。

ごちゃごちゃ言ってるけど、勇気がないだけじゃん

彼は言います。

言い訳をして、さも「こういう事情なんだ、だからしょうがないんだ」って言うけれど、

勇気がない自分を必死になって正当化してるだけじゃん、と。

支那相手に戦争起こす勇気もないやつが、対ソ戦とか言うんじゃない。

どうせ内蒙古に行けば傅作義がこっちに味方するわけないって言うし、

上海につれていけば「こんな列国環視の場所でややこしいことしたくない」とか言うだろうし、

蒋介石を嫌ってそうな軍閥を狙えって言えば「いや、あいつらに裏切る度胸はないから無駄だし」って何かにつけて言い訳するんだろ?

だったら「自分には戦争を吹っかける勇気がないんです」って素直に認めて文句言うんじゃねぇよ。

そっちの方が、よっぽど何かってときに力になりたいってと思うし、

つーか、できない理由並べて、今の自分を否定させずに、わかってもらおうとするその魂胆がだせぇ、と。

あれは恥ずかしかったなー。すげぇ。恥ずかしかった。

その場は言い訳もできず笑ってごまかしたけど、参謀本部に帰ったら彼の顔*1とセリフが思い浮かんで、

第一部長室の中で「でもさ、でもさ」と必死に言い訳考えてた。

オレにはオレの事情があるんだ、時代は満洲事変の頃じゃないんだ、しょうがねぇじゃんかよって。
お題目を唱えながら(笑)

ひとしきり考えたら、そんなあいつを「なんで作戦課長なんかにしたんだろう。河辺にしときゃ良かった」って思った。

オリジナル
要は、勇気がないんでしょ? - Attribute=51
インスパイヤ
「要は、勇気がないんでしょ?」で始まる太平洋戦争 - ARTIFACT@ハテナ系
才能の差は歴然w「大東亜共栄圏のかわいい国」は超えられねえ。