あの作戦部長は実は自業自得だった件

「要は、勇気がないんでしょ?」で始まる太平洋戦争 - ARTIFACT@ハテナ系
を読んで最初に書いたのは、実はこっちでした。実際の時系列的にもこっちが先の話なんですけどね。それにしても汎用性高いネタですね。

「要は、勇気がないんでしょ?」でツンボ桟敷に置かれる関東軍司令官

ちょっと昔の話。今よりも僕の娘婿はずっとずっと将来有望の将校*1で、まだ牢屋に入ってなかったんです。

でまぁ、当時も今と変わらず満洲の排日は酷くて、

部下と飲みながら「学良が悪い、だから排日行為が止まないんだ」と文句言ってたのです。

旅順で。

したらまた、この部下が「じゃあ、わかった」と言うのです。「今から満鉄爆破に行こう」と。

鉄道爆破なんかしたことないオレは焦りました。「いや、ちょっと待って」とあわてます。

でも部下は、少し遠くで阿片飲んでいる2人組の支那人を指さし、「あいつら使って爆破しようぜ」と言い、席を立ちます。

オレは「いや、向こうもハイになってるところで迷惑だし」とか「河本はこれで失敗したからさすがにだめでしょ」とか言って止めます。

友達は「国民党の指令書なんて持たせるから逆に失敗したんだよ」と言ってましたが、オレが動こうとしないので行くのをやめました。

「じゃあ、張学良の邸行って、あいつ殺すか?」と部下は言います。

「逆にそっちの方が難易度高いだろ」とオレは顔をしかめます。

「でも学良が悪いんだろ? だったら殺るしかないだろ」と部下は口調を強めます。

「そうだけど、もっと普通に交渉したいっていうか」とオレ。

「なに、普通って?」

「外交筋を通すとか、経済協力とか、そういう…」とハッキリ言えない自分。

「じゃあ、オレが張景恵とか連れてきて、それで学良に替わる親日政権作ってお前に紹介したらいいか? それも外交交渉だよな」という部下。

「それは…、だけど、ほら、お前もこの前言ってたじゃん。張景恵とかは緑林出の田舎ものとか」

「は?」

「その…」

「…田舎ものじゃねぇよ。純朴な子だよ」

「あ、そうだったね。…でもオレ、純朴な子、少し苦手だし。そこまでして排日をどうにかしたいってわけでもないし…」

部下はオレの顔をじっと見つめながら、一言、

「だせぇ」

と言いました。
ごちゃごちゃ言ってるけど、勇気がないだけじゃん

彼は言います。

言い訳をして、さも「こういう事情なんだ、だからしょうがないんだ」って言うけれど、

勇気がない自分を必死になって正当化してるだけじゃん、と。

鉄道爆破する勇気もないやつが、満蒙は生命線とか言うんじゃない。

どうせ土肥原使って騒ぎ起こそうって言えば「あいつの名前は中国語で凄い語呂が悪い」って関係ないこと言うし、

張学良殺ろうって言えば「あいつの親父とは付き合い長かったし、あいつはまだ親日派になる可能性がある」とか言うだろうし、

上海のかわいい元皇帝を狙えって言えば「いや、ホモはちょっと守備範囲外だし」って何かにつけて言い訳するんだろ?

だったら「自分には満蒙問題を根本的に解決する勇気がないんです」って素直に認めて文句言うんじゃねぇよ。

そっちの方が、よっぽど何かってときに力になりたいってと思うし、

つーか、できない理由並べて、今の自分を否定させずに、わかってもらおうとするその魂胆がだせぇ、と。


あれは恥ずかしかったなー。すげぇ。恥ずかしかった。

その場は言い訳もできず笑ってごまかしたけど、司令部に帰ったら彼の顔*2とセリフが思い浮かんで、

軍司令官室で「でもさ、でもさ」と必死に言い訳考えてた。

オレにはオレの事情があるんだ、しょうがねぇじゃんかよって。参謀長とお茶のみながら。


ひとしきり考えたら、そんなあいつを「部下の癖になんであんなに俺の言うこと聞かないんだろ。あれじゃいくら頭が良くても将来心配だな。それから参謀長も全然部下参謀の掌握ができてないじゃん。パシリかお前は。ってそれをいったら軍司令官の俺が一番情けないじゃないか。だせぇ」って思った。


6年後
「要は、勇気がないんでしょ?」で権威が失墜する作戦部長 - There is a light that never goes out.