インタビュー「自民党をどこへ」自民党政調会長石破茂さん

朝日10月10日朝刊

政調会長として自民党を立て直さないといけないわけですが。
「かつてのような経済成長が望めないのに加え、少子高齢化で政策の選択肢は狭いし、日本に残された時間は極めて短い。与党時代のように官僚の政策に『自民党』ラベルを張って出すのではなく、的を絞って『ギリギリ現実的に考えればこれしかない』という政策を官僚の力を借りずに作り、国民に提示する」
―官僚組織というシンクタンクの助けなしに、本当にできるのでしょうか。
自民党にもベテランから中堅、若手に至るまで、官僚の言いなりにならず、自力で政策を立案してきた人たちがいます。そういう人たちをどんどん登用する。年功序列や派閥均衡にとらわれていたら、この党は本当に終わりますよ」
私は防衛相のときも農水相のときも懸案があれば、官僚の説明を聞く前に国会図書館から関連する文献をすべて取り寄せて読むよう心がけました。そうでないと、仮にうそを言われても分からないじゃないですか。そのうえで官僚と議論を重ねて政策を立案する。防衛省改革でも農政改革でもそうした。国会図書館は国会議員にとって最大の財産です
―ブログで「広く国民の声に耳を傾ける自民党になる」と書かれています。
「野党なので時間的な余裕は与党時代よりある。現場を歩いて実態を正確に把握し、議席を失った人たちも十分活用して、全国の人の声を政権党より広く、深く聞かなくては、リアリティーのある政策は出せません」

―どんな自民党にしたいのですか。
自民党は『その他大勢党』だと思ってきました。国民全体から、特定の政党の支持者や労組の方々を除いた人たちの集まりというイメージ。特定の層に軸足を置くのではなく、家族や先祖、国、地域を素朴に大事にする人たち、庶民の共感を得る政党にしたい。ひとつの理念などを押しつける党ではありたくない。どこが違うかではなくて、どこで一緒になれるかを考えましょうと。主張を先鋭にすると熱狂をもって迎えられるかもしれないが、結末は往々にしてハッピーではない。時間がかかってもやむを得ない。自民党復権は数年でできるほど生やさしいことだとは思っていません」
大きな政府か小さな政府かでは中ぐらいの政府を目ざします。社会主義的な大きな政府は志向しないが、弱肉強食的な小さな政府も求めない。困っている人たちに思いやりの心がもてる、身の丈にあった中ぐらいの政府です」
保守政党ではないのですか。
「私は保守はイデオロギーだと思っていない。感覚、フィーリングです。皇室を敬い、国旗、国歌を尊ぶ。家族や先祖、地城のつながりを大切にする。そんな感覚。愛国心といってもそれは個人の内心の問題で、人に押しつけたり、叫んで歩いたりするものではない
自民党には「真正保守」の再生を求める声があります。
何をさして真正保守というのか分からないので、今後よく議論していきますし、そういう考え方の人がいるのも大切です。でも、それを党の唯一の結集軸にすることには違和感を覚えます