珍名の再生産

陸士25期に前田狐狸狗馬という人がいた。卒業名簿によれば兵科は野砲兵だったようだ。松下芳男博も読み仮名を書いてくれていないので、本当のところなんと読むのかは私もわからない。いくら昔といってもこれは相当な珍名で、なんでも九州の新聞の珍名投票で一等になったそうだ。しかし前田氏もお父さんを恨むことはできない。何故ならお父さんの名前も「猪狗馬」といったからだ。
昔は名前の読みについても随分大らかなところがあった。田中隆吉は「りゅうきち」で通っているけど、親がつけた読みは「たかよし」。西郷さんと太閤さんからとったそうだ。ということで彼もある意味通名
宇垣一成はもともと杢次といったが、結婚を機に一成に改名した。「一番に成る」という意味を込めたのだろう。
宇垣はまだ若いころの改名だからいいが、大井菊太郎は中将になってから成元に改名した。「元帥に成りたや」という意味だと世人は噂したそうだ。勿論元帥には成らなかったが大将には成った。長閥の威光斯くの如し。