人肉うまー

朝日新聞朝刊世界発2009より

「南京市江寧区不動産管理局長の周久耕を追跡せよ」
昨年12月11日、人肉捜索専門のネット掲示板にこんな書き込みが現れた。
前日、局長は記者会見で不動産価格の下落について「開発業者は慈善家じゃないだろう。格安で売った開発業者は処分する」などと発言。市民の反発を招いていた
書き込みの3日後、机上の高級たばこ「九五至尊」に印がつけられ、「局長は1カートンー500元(約2万円)のたばこを吸っている!」と添え書きのある写真が掲載された。10万元 (約130万円)相当というスイス製腕時計姿も流れた。
他のサイトにも転載され、 「キャデラックで通勤している」「弟は不動産業者」「息子は建材業者」……情報が飛び交い、「こんな幹部は早く辞めろ」などと批判が集中。市規律検査委員会は調査を始め、公金による高級たぱこの購入や数十万元の収賄容疑などが判明し、3月20日共産党籍と一切の公職を奪われた。
南部・深せん市では昨年10月29日夜、海鮮料理店で小学6年の女児(11)を中年男が男子トイレに連れ込もうとし、何とか難を逃れた女児の訴えで両親が男に抗議。すると「やったよ。だからどうした。おれは交通運輸省から派遣された。ランクはお前たちの市長と同じだぞ。おれと戦えると思うか」と逆にすごんだ。
だが、一部始終が映った店内の防犯ビデオの映像がネットに流れると、深せん海事局の林嘉祥・副局長と判明。経歴や携帯電話番号、自動車ナンバーなどが暴かれた。2日後に停職になり、11月3日に解任された。

一方、人肉捜索で個人に深刻な被害が及ぶこともある。
河南省の裁判所で3月3日、女子大生(20)を殺した罪に問われた無職の林明被告(22)の初公判が開かれた。
04年にチャットがきっかけで交際。だが女性は大学入学直前の昨夏、携帯番号もチャットのアドレスも変え、連絡を絶った。被告は10月、ネット掲示板に「彼女の家庭は貧しく、仕事をかけ持ちして学校にやったが、大学に入ると裏切った。私は白血病。死ぬ前に1度だけ彼女に会いたい……」などとうそを並べ、個人情報の提供を呼ぴかけた。すぐに携帯や宿舎の部屋の番号、実家の住所などが寄せられ、林被告は大学に押しかけて果物ナイフで刺殺した。

昨年4月、米デューク大でチベット支持の学生と中国人留学生のにらみ合いを仲裁した留学生の王千源さん(21)は「チベット独立支持派」として標的に。山東省の自宅は中傷の落書きで埋まった。王さんは「不幸に追い打ちをかける人ばかり。友人と思っていた人さえののしった」と憤る。