「福田さんとは違うんです」「働いたら負けと思ってる」

朝日新聞9月6日朝刊、特派員メモより。

「こんな事態、日本の首相ならとっくに辞めている」
混乱するタイの政局の打開策を討論する先月末の特別議会で、上院議員がサマック首相を責め立てた。一方、辞任を拒否する首相は「オウム真理教」を引き合いに出して反政府派の横暴を糾弾する。
確かに国は無法状態だ。南部の空港は一時、反政府派に乗っ取られた。香港から応援に来た同僚は、占拠された首相府を見てあぜんとした。
「中国なら死刑ですわ」
選挙で選ばれた正統性を主張する首相は正しい。だが手にした権力を行使して無法状態を解消せず、統治者としての適性が問われている。
平和主義者なのではない。学生多数が軍に虐殺された76年の政変で騒ぎを扇動したとされる。流血で多くの政権が倒れた歴史から「手を出したら負け」と考え、責任を放棄しているようにみえる。
特別議会の翌日、今日は辞めるかと待っていたら、辞めたのは福田首相だった。
「やはり日本の首相は政治責任を取った」。上院議員は胸を張った。今や反政府派の合言葉は「福田を見習え」。
居座る首相と投げ出した首相。サマック首相が先月末、訪日を中止し首脳会談は幻に終わった。政治家の進退を占うのは難しい。

オウムを引き合いに出してというところが気になる。