昭和憲兵史

憲兵の種類は大別して二つある。憲兵司令官隷下の内地、朝鮮、台湾、樺太にある憲兵、これを勅令憲兵と呼ぶ。作戦地域において軍司令官の隷下にある憲兵隊は、これを軍令憲兵と呼ぶ。関東憲兵隊は後者に入る。同憲兵隊は満洲事変以降徐々に増強され、北支事変勃発時には将校下士官兵併せて1400名前後の兵力であった。一方北支の憲兵は約40名、上海は僅かに14,5名であった。
憲兵の動員計画は北清事変当時と殆ど変わるところは無かった。即ち2乃至4個師団からなる1個の野戦軍に対し憲兵尉官1、下士官兵20及び兵站監部に憲兵佐官1、同尉官1、下士官兵60というものであった。当時の動員計画からいえば、全計画に基づく憲兵の動員兵力は最大で僅かに400名前後にすぎなかった。
北支事変が勃発すると、動員計画に基づいて軍司令部配属憲兵(尉官1、下士官兵22)、兵站配属憲兵(佐、尉官各1、下士官兵60)が動員され、逐次北支に駐屯した*1
戦火が上海に飛び火すると、初期の上海派憲兵が60名前後に増強されたが、それだけでは到底軍事警察を遂行するを得ずということで、初めて臨時動員の憲兵を以て野戦憲兵隊が編成された。長は憲兵(中)大佐にして兵力約200名よりなる。その後事変が拡大すると、従来の駐屯憲兵と増員された憲兵との指揮系統の統一などを目的とし、北支那、中支那にそれぞれ憲兵隊司令部が置かれた。

終戦時外地憲兵隊人員一覧

区分 将校 下士官
関東憲兵 168 2592 559 3319
北支憲兵 93 1109 783 1985
中支憲兵 184 2853 2538 5575
南支憲兵 31 404 268 703
昭南憲兵 15 193 154 362
緬甸方面憲兵 75 740 635 1450
第二十五軍憲兵 30 277 195 502
第十六軍憲兵 40 417 265 772
第十四方面軍憲兵 86 1430 1020 2536
第二十九軍憲兵 36 316 250 602
第三十七軍憲兵 36 316 250 602
南方軍第一憲兵 37 427 275 739
南方軍第二憲兵 17 256 273
六方面軍憲兵 78 998 364 1440
第五野戦憲兵 21 295 37 353
六野憲兵 16 222 36 275
第八野戦憲兵 21 324 36 381
第十野戦憲兵 21 324 36 381

*1:支那駐屯憲兵