ラインハルト

ワイマール共和国の統帥部長ヴァルター・ラインハルト大将は、ウィーラー・ベネットの『権力のネメシス』だと、ゼークト、グレーナーとは対照的な守旧派の将軍としてしか描かれていない。ところが彼は、カップ一揆に際して、あいまいな態度をとるゼークトと違い、断固武力討伐を主張している。ウィーラー・ベネットはそのことについて、さらっと流しちゃってるが、私はこれが不思議だった。反動将軍のはずのラインハルトが何故カップ、リュトビッツの一揆討伐を主張するのか、と。室潔『ドイツ軍部の政治史』はこのラインハルトについてもう少し深く触れている。その中で室教授はラインハルトについて、確かにかつては熱心な帝政派であったが、このころはワイマール共和制に与し、旧来の軍隊の遺産を生かしながら、新たな共和国の軍隊を作ろうと考えていたと評している。人間というのはやはりそう単純に割り切れるものではないね。