翼賛選挙

戸川猪佐武の『小説三木武吉』に次のような一節がある。

非推薦候補の一人、大石倫治大石武一佐藤栄作内閣の初代環境庁長官の父)は、
「翼賛会のめざすところは、どうもおかしい。自分の政治生命はこれで終わるかもしれないが、政党政治家の立場を貫きたい。家族のことを頼む」と、友人に手紙をしたためた。
翼賛会側はこの大石に対し、仙台の現職師団長(陸軍中将)を推薦候補に立てた。大石の演説会には、在郷軍人会が入り口を固め、聴衆を入場させないなど、あらゆる妨害を加えた。それで、大石を落選してしまった。

この中将というのは高木義人(19期)を指しているが、現職師団長というのは間違いだろう。終戦前に召集されて仙台師管区司令官をしていたが。ちなみに第21回衆議院議員総選挙で当選した旧軍人は、

  1. 橋本欣五郎陸軍大佐*1
  2. 満井佐吉陸軍中佐*2
  3. 四王天延孝陸軍中将*3 全国トップ当選
  4. 高木義人陸軍中将
  5. 金子定一陸軍少将 19期。『私の昭和史』の中の虎の掛け軸の話で母親と共に登場する人。
  6. 松永寿雄海軍少将
  7. 植松練磨海軍少将
  8. 真崎勝次海軍少将 真崎甚三郎*4実弟

鳩山一郎中野正剛三木武吉らを中心に盛り上がった戦時刑事特別法改正反対運動で、最後まで政府案に反対を貫き通した人の中に、真崎と満井の名前がある。真崎は兎も角満井に関しては、意外に思われる人もいるかも知れないが*5、他に水谷長三郎や赤尾敏の名前も見える。この辺がちょっと面白いところである。

小説三木武吉 (角川文庫 緑 481-19)

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