一九四五年夏 最後の日ソ戦

日本のマスコミというのは本当に不思議だ。
日本軍の与えた被害に関しては嬉々としてこれを報道するが、
逆に関しては、異常なほど抑制的だ。
原子爆弾ですら、ややもすると、早く降伏しなかった日本が悪いというような論調になる。
東京大空襲も、米軍による無差別虐殺であるという文脈でこれを捉える事は殆ど無い。
相手がソ聯や中国になると、この”自己規制”の度合いは一層酷くなる。
現在ロシア大統領が来日し、北方領土問題が話題となっているが、そもそも何故この”北方領土”なるものが生まれたのか、きちっとやるマスコミは全然無い。
北方領土占領は200パーセントソ聯による侵略である。
こんな当たり前のことがなぜ言えないのか。何を憚ることがあるのか。

本書は、8月15日のポツダム宣言受諾以降に起ったソ聯による千島樺太侵略と、制限された状況下でそれに抗した第五方面軍の奮闘を描いた良著である。戦争は8月15日でプツッと終わったわけではないということを、あらためて痛感させられる。