闘魂硫黄島

闘魂硫黄島


著者は陸士48期。船舶参謀として、陸軍軍人でありながら海上護衛隊に勤務し、大井中佐らと机を並べていた人物だけに、本書序盤では、その頃の話にページを割いている。船舶司令官として著者の上司であった鈴木宗作中将の直話など、興味深い。

その後、東條の逆鱗に触れてサイパンにとばされる塚本清彦少佐と共に第三十一軍に赴任するはずが、飛行機に乗り損ね、取り残される。長勇少将と、サイパン奪回計画を練るよう命じられるが、これも中止となり、小笠原の第百九師団参謀を命ぜられた。

硫黄島で初めて会った栗林忠道中将は、陸大出の著者を気に入り、二人の間ではかなり込み入った話がなされる。が、日本の将来を悲観しながらも、鉄の意志で地下要塞をつくり米軍の足止めをと考える中将と、そこまでの情勢認識の無い他の参謀の間はしっくりいかない。結局参謀長以下更迭となり、後任に、歩兵戦術の大家である高石参謀長、中根参謀、千田旅団長がやってきて、中将を補佐し、あの激戦を貫徹せしめた。

著者は、硫黄島への輸送業務のため、父島に留まっており、命を拾う。著者が描く栗林中将、西中佐をはじめとした陸海軍軍人の横顔は、なかなか貴重である。本書には著者の回想の他に、実際に硫黄島で戦い捕虜となった工兵隊長の手記なども収録されている。

ちなみに、著者はぼかして書いているが、父島でも大事件があったのだ。有名な人肉食事件である。立花芳夫旅団長以下数名の将校がB級戦犯として処刑されたこの事件、著者はむしろ米軍捕虜をかばった(自分の英語教師にすることで助けようとした)ことで起訴を免れ、その縁からか、戦後、在日米空軍に勤務する傍ら、メリーランド大学極東部で教鞭を振るった。



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