ある陸軍軍人の生涯

岡崎清編著『岡崎清三郎抄伝 ある陸軍軍人の生涯』

岡崎は秩父宮殿下の英国御外遊に付き従った。殿下はご自分で自動車を運転するのがお好きだった。北白川宮殿下の事故もあったので、岡崎は何度もやめていただくよう進言したが、殿下は「英国では皇太子を始め誰でもドライブをしている。構わないよ」と取り合われない。そこで林権助に頼んで、彼からも進言してもらったが、「岡崎君、殿下に申し上げたが駄目だよ」と言ってきた。そこでドラモンド夫人に頼んだが、これも駄目。最後の手段として、日本に帰っていた松平慶民に頼んで、皇后陛下から止めてもらおうとしたが、松平から次のような手紙が来た。「皇后様に申し上げたが、秩父宮はよう考えているから、心配せんで宜しいとの言葉だ。親馬鹿というのは仕方がない」

しかし実際、殿下の運転は結構荒いもので、アクセルとブレーキを踏み間違えたり、おばあさん轢きかけたり、岡崎はいろんな人から怒られて、「ソーリー」と謝ることがよくあったという。