将軍の息子

大山柏『金星の追憶鳳書房1989

著者大山柏は、日露戦争満洲軍総司令官・元帥陸軍大将・公爵大山巌の嗣子である。母は会津藩家老山川浩の妹で、津田梅子らとともにアメリカに渡った山川捨松。著者自身も陸軍に入ったが、軍人としての将来には早々に見切りをつけ、大好きな考古学に没頭。昭和3年、少佐のときに自ら望んで予備役に入ると、慶応義塾で考古学講師となった。昭和18年に召集され、室蘭、根室に勤務。戦後は西那須野に住み、考古学の他に戦史の研究にも打ち込んだ。著作に、戊辰戦争史の決定版『戊辰役戦史』などがある。

しかし本書は、陸軍時代の思い出を軽妙な筆致でユーモアたっぷりに描いた柔らか〜い本だ。個性的な同期生たち、渡河作戦マニアの上原元帥、将軍の月俸くらいもする高価なタバコの話、小遣いに困って大久保に偽書を売りつけようとした大西郷、李王殿下と金武官・銀武官などなど愉快な逸話が満載。また世間一般に流布している人物像とはかけ離れた大山元帥の実像などは、価値ある記録である。軍人好きには堪らない、絶対お奨めの一品!