泥縄

『奇をてらわず』に北支事変勃発直後の参本の様子が出てくる。それによると動員班長(名前は無し)は明白に不拡大派であり、拡大派(一撃派)のロシア課長と支那課長が石原莞爾を囲んで責め立てていると、その動員班長は石原側に立ってこの論戦に加わり、上司の武藤章(拡大派)に耳を引っ張られて追い出されたそうだ。このときの動員班長って誰だったかいなと、みすず書房の現代史資料37・大本営を開いたけど分からなかった。他の本で一応それらしい人物*1は見つけたので、またブログの方に書く。
ところでそれはそれとして、この現代史資料には、まだ中佐の頃の酒井鎬次が書いた「大本営編制改正の顛末」という文章が収録されている。第一次世界大戦も鑑み、古く欠陥のある戦時大本営条例を改正しようという動きは、当時もあったんだけれども、セクショナリズムの発露例の如しで、抜本的改正には至らなかった。その辺の顛末が書いてあるわけだ。で、そのまま昭和の戦争に突入して結果はあの通り。
有事の法制は平時に議論する。あれだけ痛い目にあったのに、こんな当たり前のことが、戦後も相変わらずこの国はできなかった。ちょっとでもやろうとしたら気違いみたいに騒ぐ。ところが今ではカンボジアのPKOはやってよかったというのが朝日新聞の見解のようだ。いつ転進したのやら。
しかし今の政治家に有事法制などやらせて良いのかという意見もあるだろうし、それは全く正論だと思う。はっきりいって官僚はよく分からんが、今の政治家とマスコミは相当ヤバイ。どれくらいヤバイかというと

(c)古谷実
結局わが国は、また大事な機会を逃してしまったのでないかと危惧する。

*1:後にガ島でクビになった人